「真剣な顔で何言い出すかと思えば、そんなの“伝えたいこと”じゃねーじゃん」
――違うよ、悠。
私が本当に伝えたいのは――…
「殴れば?」
「――じゃあ、その前に。私の部屋から出てほしいんだけど」
「ん、分かった」
悠は窓を伝って自分の部屋に戻ると、こっちを向いて目を瞑った。
「ほら、いいぜ」
無防備に目を閉じる悠の綺麗な顔に手のひらをくっつける。
「悠なんて大っきらい」
“大好きだよ”
その言葉を飲み込んで。
悠の顔を自分の方に引き寄せると、そのままキスをした。
「……え?」
驚いて目を見開く悠。
「一発殴るなんてやっぱり出来ないから、悠が一番嫌だと思うことをしてやったの」
嫌いな相手にキスされるなんて、これ以上にムカつくことはないでしょ?
「じゃ、おやすみ」
窓を閉めてカーテンを閉じると電気を消した。