「……どうした?」


どうやら秀真は気付いていないらしく、固まったままの私を不思議そうに見る。


「えっ……別に何も」


バッグから眼鏡を取り出すとそれをかけて再びスクリーンを見上げた。


本当に居るんだ、映画館でキスするカップルって……。


――キスか……。


そういえば、一番最後にキスしたのって――…


そんなことを考えていたら、ちょうど映画のスクリーンにキスシーンが映し出された。


魅入るように釘づけになる。

映画の中のカップルは、とても幸せそうな顔で互いを見つめ合う。


私にもそんな時期があった。

大好きな人と手を繋ぐだけでドキドキして、一緒に居るだけでも幸せだと感じていたのに――…


別れてからまだ半年程しか経っていないのに、もう随分と前のことのように思えた。