「ねぇ、秀真くん。クッキー焼いてきたから食べない?」
「今日、みんなでカラオケ行くんだけど悠も行こうよ!」
教室に着くなり、早速二人はクラスの女子に囲まれた。
うちの進学科は2クラスしかない為、3年間クラス替えはない。
だから今日が始業式でも、教室の雰囲気に変わり映えはなかった。
美味しそうにクッキーを食べて喜ぶ秀真と、ギャルに囲まれて少し迷惑そうな悠。
蚊帳の外状態になってしまい、ため息をこぼしながら自分の席に座る。
「みんなの狙いが一気に彼らに定まったって感じよね」
昇降口であたしを一人取り残して行った祐実が、そう言って二人を見る。
「――で?明里の本命はキュートな立川くん?それともワイルドな今野くん?」
ニヤリと気持ち悪い笑顔を浮かべる祐実。