「はいはい」

とポケットから取り出した飴玉をそこに置き、ギュッと握らせた。


「いや、飴じゃなくて……」


渡した飴をギュッと握りしめながら、秀真が不満げな表情を浮かべる。


「あ、違った?てっきり“ちょうだい”の意味かと……」


そう言って笑うと、一段目の階段に足を踏み出した。


「んなわけないじゃん!明里は何も分かってないなあ」

「じゃあ、何よ?」


秀真はシュンと肩を竦め、“もういいよ”と下を向いて呟いた。


「明里って本当にバカだよな。秀真が欲しいものも分からないなんて」

「悠は分かるって言うの?」

「当然だろ。お前と違って俺は頭いいからな」


そう言って下駄箱を閉める。


もしかして、チョコレートの方が良かったとか?