次の日。


「明里」


いつものように家を出ると、玄関先で秀真が携帯を弄りながら待っていた。


「こんなとこで待つなんて初めてじゃない?」

「彼氏居る女の部屋に、そう入れるわけないじゃん」


秀真の言葉に、私は黙り込む。


「こう見えても俺、そういう所はちゃんとしてるし……ってどうかした?黙っちゃってさ」

「……えっと……実はまだ正式には付き合ってなくて……」

「はっ?何それ!」


秀真はキョトンと目を丸くして、持っていた携帯をズボンに突っ込む。


「ほら、梨花さんのことがあるでしょ?それが解決するまではね」


「あー……」


どうやら秀真は、梨花さんの存在をすっかり忘れていたみたいだ。


「そうだった。まだ難関があったんだっけ……」

「うん。梨花さんが悠のことをすごく好きなの知ってるから簡単には解決する問題じゃないと思うんだけど……」


「ハルは何て?」

「待ってて、そう言ってくれた」

「だったら大丈夫っしょ。アイツの気持ちはハンパねえからさ」

「え?ハンパない?」

「――こっちの話。ほら、早く学校行こうぜ」


秀真は誤魔化すように学校に向かって歩き出した。