「今まで諦めずに頑張ってきてよかったな」

「うん……すごく辛かったけど本当にそう思う」

「でも、これからがきっと大変だぞ」


お兄ちゃんにそう言われて黙って頷く。


私達には解決しなければならない問題がある。


それは梨花さんのこと……。


「俺が見た限りだと、あの子は手強そうな気がするなあ」

そう苦笑する。


「……どうした?浮かない顔して」


元気のない私の顔を覗き込みながら、心配そうにお兄ちゃんが訊ねる。


「これでよかったのかなって……」


梨花さんのことを考えたら、凄く胸が痛い。


「じゃあ、このまま一生自分の気持ちを伝えないままでよかったのか?ん?」

「それは嫌だけど……」

「欲しいものは欲しいってちゃんと口にしないと、後で後悔することの方が多いんだからな?」

「うん……」


「あまり深く考えずに思った通りにすればいいさ。時には何かを犠牲にしなきゃいけない時だってあるんだし、それは明里だけじゃなくて悠も一緒なんだから、一人で悩まなくたっていいんだよ」


お兄ちゃんのその言葉で、少しだけ気持ちが軽くなったような気がした。