「よっぽどのことが無い限り、お前が明里を振ることはないって思ってたし、明里の話を聞いてなんとなく察してたよ」
「さすが祥兄だな」
「お前らが付き合いだした頃、俺がお前に言った言葉覚えてるか?」
「ああ、ハッキリ覚えてるよ。“お前は一生明里には敵わない”だろ?」
「その通り。何があっても絶対お前らは一緒にいる運命ってことだよな」
運命か……
「俺はもう逃げない。明里からも自分からも絶対に」
「それだけ真剣なら俺は認めてやるよ。それから一つだけ人生の先輩からのアドバイスな」
祥兄は周りの目を気にしながら小声で言った。
「好きな女の全部を自分のものにしたいなら、逆に女からそういう風に思わせてやればいいんだよ」
俺はその意味が最初分からなかった。
「だから要するに、アメとムチ」
そう言って軽く俺の肩を叩くと、家の中に入って行った。
「やっと素直になったか、馬鹿ハル」