「俺だってお前と同じだよ。自分から別れようって言ったくせに、それでも明里のこと、全然諦めきれなかったんだよ」
「……どうして?私のことを好きでいてくれたのならどうして別れようって言ったの?!」
「――お前が俺の前で泣いたからだよ」
え?泣いたから?
「絶対泣かせない自信があったのに、俺はお前のことを泣かせた。だから急に怖くなったんだ」
「待って?泣いたっていつのこと?」
「去年の俺の誕生日の日」
「あ……」
――去年の10月。
悠の誕生日は平日だったから、学校が終わってからをゆっくりお祝いしようってことになった。
学校帰りに駅前のケーキ屋で小さいホールケーキを買い、そのまま悠の家に行った。
他愛もない話をしたりホールケーキをそのままフォークで突っついて食べたり……
あっという前に時間は過ぎて行って、会おうと思えばすぐに会える距離にいるのに離れがたくて――――。
あの日のことを懐かしく思いながらも、ちょっと切なくなる。
「お前が帰りたくないって言った時、俺も何か帰したくなくて……だから……」
そこまで言って悠は言葉を詰まらせた。