「明里っ!」
「秀真、どうしたの?もうすぐ授業始まるのに」
教室に戻ろうとした時、秀真が慌てた様子で走って来た。
「ハルに何処かに連れて行かれたって聞いて、居ても立ってもいられなくてさ! ……って、ええっ?明里どうしたんだよ?」
秀真の顔を見た途端、思わず涙が零れ落ちた。
「え?何があったんだよ?」
「私、またやっちゃった……。梨花さんに気持ち知られてた……もう手を出すなって……。悠に好きだって言うことも絶対に許さないって……」
「取りあえず場所変えよう」
私の身体を支えながら、秀真は1階へと下りていく。
保健室の前にやってくると、ドアの前に“外出中”の看板がぶら下がっているのを見て、秀真は溜息ついた。
「何だよ、先生居ないじゃん。……あ、でも鍵開けっぱなしだ。先生不用心だなあ。でも勝手に中入ちゃおうぜ」
ドアを開けて誰も居ない保健室に入ると、あたしを丸椅子に座らせた。
「ここなら、誰にも気づかれずに泣けるっしょ?」
「……っ、ありがと」
ここが学校であることも忘れ、秀真の前で目が真っ赤に晴れ上がるまで泣いた。
秀真はそんな私の背中を何回もさすりながら、
「大丈夫だから」
と言ってくれた。