「貸してもらえますか?」

彼女は手を差し出した。
ちょっと睨みつけるような感じで、何も言わずハンカチを渡した。

「なんか、かっこわるーい。」

彼女はそう言って笑っていた。
腹は立っていたが、その笑顔がとても眩しかった。

「洗って返しますから。」

「いいよ、別に。」

「それじゃ、悪いですから・・・」

まるでニ流のTVドラマのワンシーンのような、ありきたりの会話を交わしていた。

それが彼女との出会いだった。

12月17日、この時期にしては少し暖かい日だった。