俺があんなマジもんの殺し合いに巻き込まれてから数日が経過した。
幸い、あの出来事以降、ゆきねにも天笠さんと出会うことはなく、もっぱら巫部にとっ捕まえられていただけであった。やっと普通の世界に戻れたと思ったら、もう一つの世界を探すなんてどんな罰ゲームなんだよ。昔のバラエティでももう少しまともなものをやってたぞ、くそっ!
ついでに言うと、あれ以来天笠からのメールは来なくなった。もちろんのことだが。
さて、放課後、今日も今日とて巫部にとっつかまりもう一つの世界なんて分けのわからんものを探すはめになってしまった。完全下校のチャイム後にやっとのことで解放された俺は心身ともに消耗しまくり後は弱パンチ一つで完全ノックアウト状態な感じで校門を出ると、
「ちょっと待ちなさい」
さっきまでのトラウマか体がビクっと反応してしまうが、よくよく考えてみると巫部とは声が違う気がする。はて、誰だろうと振り返るとどこかで見たことのある少女がそこにいた。
「あっ、あれ? 君は……」
「やっと出てきた。待ちくたびれたじゃない」
「なっ、なんで君がここにいるんだ?」
こんな疑問が浮かんでくるのも当然だ。確か目の前の少女は、「狩人」と呼ばれ、ニームと呼ばれる存在を探しており、つい先日には天笠さんとガチンコの殺し合いをしたんだ。だが、今までと決定的に異なる部分がある。それは彼女がこの学校の制服を着ていたからだ。
「ところで、何で制服を着てるんだ?」
「何言ってんのよ。学校に来ているんだから制服着るのは当たり前じゃない」
「いやいや、だから、なんでウチの制服を着てるんだ? もしかして実はここの生徒だったとか?」
「あの服のままここにいちゃ目立つでしょ。郷に入れば郷に従え、学校の周りじゃこの格好の方が都合いいでしょ。それと、私はここの生徒じゃないわよ」
まあ、予想の範囲内だな。長刀と拳銃で殺し合っていた少女が同級生でしたって陳腐なオチにはならないか。
「うーん。聞きたいことは山ほどあるんだが、まず、その制服はどこから調達したんだ?」
「これ? 可愛いでしょ?」
そんな事を聞いてるんじゃない。
「さっきいた生徒に借りたのよ。制服貸して~って言ったら素直に貸してくれたわよ」
何があったか詳細には聞かない方がよさそうだ。俺の脳裏には、半泣きで制服を差し出す女子生徒の姿が写ってしまった。ていうか、普通に事件だろ?
「さあ、こんなところに突っ立ってないで探しにいくわよ」
「なにを?」
「あんたアホなの? この前説明したでしょ。ニームを探しに行くに決まってるじゃない」
「いつから探すってんだ」
「は? そんなの今からにきまってるでしょ。やっぱりあんたはアホなの?」
「そんなにアホアホ連呼するな。それに何日も姿見てなかったから、てっきり俺の事は諦めてくれたもんだと思ったんだけど」
「ちょっとこの街の事を調べてたのよ。それに、やっぱり一人で探すには限界があるみたい。あんたは私のバディなんだからつべこべ言わずついてくればいいのよ」
「ちょっとまってくれ。俺はそのバディとやらになんかなった覚えはないんだが」
「あらそう。じゃあ、私の存在や組織の事を知っちゃったから殺すわ。まあ、最も私がやらなくても、あいつらが殺しにくると思うしね」
「……」
「それでも、バディにならないって言うの?」
「務めさせていただきます」
なんなんだ。命の危険がありそうなバディとやらなければならないなんて。しかも、断っても死ぬだなんて。どっちにころんでもデッドなエンドしか待ってないじゃないか。そんなに軽いもんか? 俺の命っていうのは。
「ほら、決心がついたのならさっさと歩きなさい」
心底あきれたように見上げるゆきねは、踵を返し、駅へと向かい颯爽と歩きだした。しかしまあ、巫部の呪縛から解き放たれたと思ったらこんどはこっちだなんて、俺の人生はどこに向かっていっているのやら。
ゆきねと並んで街中を歩く。なんとなく通行人の視線が痛いのは、きっと、ゆきねは「超」がつくほどの美少女で、俺もなんとなく居心地の悪さを覚えていた。
「ねえ」
いかにも学生同士ですと、胸を張り堂々と歩くゆきねが不意に口を開いた。
「ニームはどこにいると思う? あんた、心当たりある?」
「いや全然。そもそもそのニームとやらが何なのかさっぱり見当がつかないんだけど」
「はあ、あんたに聞いたのが間違いのようね」
「いやいや。この前まで普通に生活していた俺に聞くのが間違ってないか? しかも、そんな始まりの人なんて言う重要な奴がこんなちっぽけな町にいるはずがないと思うが」
「まあ、その人間は昔からニームって訳じゃないわ。あることがきっかけでニームを宿しちゃったって言ったほうがいいわね。だから、誰にでもニームになりえる可能性があるのよ。それがたまたまこの街の人だったってわけ」
「じゃあ、そのニームを追ってお前はこの街に来た……と」
「お前って言うな!」
「ぐはっ!」
切れ味鋭いボディーブローが炸裂していた。って、このままだと俺の身体が持たない気がする。
幸い、あの出来事以降、ゆきねにも天笠さんと出会うことはなく、もっぱら巫部にとっ捕まえられていただけであった。やっと普通の世界に戻れたと思ったら、もう一つの世界を探すなんてどんな罰ゲームなんだよ。昔のバラエティでももう少しまともなものをやってたぞ、くそっ!
ついでに言うと、あれ以来天笠からのメールは来なくなった。もちろんのことだが。
さて、放課後、今日も今日とて巫部にとっつかまりもう一つの世界なんて分けのわからんものを探すはめになってしまった。完全下校のチャイム後にやっとのことで解放された俺は心身ともに消耗しまくり後は弱パンチ一つで完全ノックアウト状態な感じで校門を出ると、
「ちょっと待ちなさい」
さっきまでのトラウマか体がビクっと反応してしまうが、よくよく考えてみると巫部とは声が違う気がする。はて、誰だろうと振り返るとどこかで見たことのある少女がそこにいた。
「あっ、あれ? 君は……」
「やっと出てきた。待ちくたびれたじゃない」
「なっ、なんで君がここにいるんだ?」
こんな疑問が浮かんでくるのも当然だ。確か目の前の少女は、「狩人」と呼ばれ、ニームと呼ばれる存在を探しており、つい先日には天笠さんとガチンコの殺し合いをしたんだ。だが、今までと決定的に異なる部分がある。それは彼女がこの学校の制服を着ていたからだ。
「ところで、何で制服を着てるんだ?」
「何言ってんのよ。学校に来ているんだから制服着るのは当たり前じゃない」
「いやいや、だから、なんでウチの制服を着てるんだ? もしかして実はここの生徒だったとか?」
「あの服のままここにいちゃ目立つでしょ。郷に入れば郷に従え、学校の周りじゃこの格好の方が都合いいでしょ。それと、私はここの生徒じゃないわよ」
まあ、予想の範囲内だな。長刀と拳銃で殺し合っていた少女が同級生でしたって陳腐なオチにはならないか。
「うーん。聞きたいことは山ほどあるんだが、まず、その制服はどこから調達したんだ?」
「これ? 可愛いでしょ?」
そんな事を聞いてるんじゃない。
「さっきいた生徒に借りたのよ。制服貸して~って言ったら素直に貸してくれたわよ」
何があったか詳細には聞かない方がよさそうだ。俺の脳裏には、半泣きで制服を差し出す女子生徒の姿が写ってしまった。ていうか、普通に事件だろ?
「さあ、こんなところに突っ立ってないで探しにいくわよ」
「なにを?」
「あんたアホなの? この前説明したでしょ。ニームを探しに行くに決まってるじゃない」
「いつから探すってんだ」
「は? そんなの今からにきまってるでしょ。やっぱりあんたはアホなの?」
「そんなにアホアホ連呼するな。それに何日も姿見てなかったから、てっきり俺の事は諦めてくれたもんだと思ったんだけど」
「ちょっとこの街の事を調べてたのよ。それに、やっぱり一人で探すには限界があるみたい。あんたは私のバディなんだからつべこべ言わずついてくればいいのよ」
「ちょっとまってくれ。俺はそのバディとやらになんかなった覚えはないんだが」
「あらそう。じゃあ、私の存在や組織の事を知っちゃったから殺すわ。まあ、最も私がやらなくても、あいつらが殺しにくると思うしね」
「……」
「それでも、バディにならないって言うの?」
「務めさせていただきます」
なんなんだ。命の危険がありそうなバディとやらなければならないなんて。しかも、断っても死ぬだなんて。どっちにころんでもデッドなエンドしか待ってないじゃないか。そんなに軽いもんか? 俺の命っていうのは。
「ほら、決心がついたのならさっさと歩きなさい」
心底あきれたように見上げるゆきねは、踵を返し、駅へと向かい颯爽と歩きだした。しかしまあ、巫部の呪縛から解き放たれたと思ったらこんどはこっちだなんて、俺の人生はどこに向かっていっているのやら。
ゆきねと並んで街中を歩く。なんとなく通行人の視線が痛いのは、きっと、ゆきねは「超」がつくほどの美少女で、俺もなんとなく居心地の悪さを覚えていた。
「ねえ」
いかにも学生同士ですと、胸を張り堂々と歩くゆきねが不意に口を開いた。
「ニームはどこにいると思う? あんた、心当たりある?」
「いや全然。そもそもそのニームとやらが何なのかさっぱり見当がつかないんだけど」
「はあ、あんたに聞いたのが間違いのようね」
「いやいや。この前まで普通に生活していた俺に聞くのが間違ってないか? しかも、そんな始まりの人なんて言う重要な奴がこんなちっぽけな町にいるはずがないと思うが」
「まあ、その人間は昔からニームって訳じゃないわ。あることがきっかけでニームを宿しちゃったって言ったほうがいいわね。だから、誰にでもニームになりえる可能性があるのよ。それがたまたまこの街の人だったってわけ」
「じゃあ、そのニームを追ってお前はこの街に来た……と」
「お前って言うな!」
「ぐはっ!」
切れ味鋭いボディーブローが炸裂していた。って、このままだと俺の身体が持たない気がする。