この人は人を苛立たせるのが得意なのだろうか?

今私はイライラして仕方ない。


「それより、要件はそれだけですか。

なら、私は行きますけど」


肘掛を手で押して立ち上がり、椅子に座っている上司を見下ろした。

顎のザラザラとした痛そうなヒゲを触って、上司は「あぁ」と答えた。

そして一礼してから、背中を向けて扉へと歩き出す。

重い扉を再び開け、私は鉄の臭いのする部屋を出た。