「……くっ……はっ……」
 ゆっくりと……だが確実に、血を奪われる喪失感が体を襲う。
 なんとか抵抗しようとしても、体に力が入らない。
 ……まるで、血と一緒に魔力と生命力を奪われている感じだ……
「――タキト!」
 すると、いつの間に抜いたのか、クーガが剣を振りかぶってシュレに斬りつける!
 しかし、寸でのところで剣を交わされ、シュレは大きく跳び退る。
「……クーガ……助かった……」
 血を奪われたせいで体はだるいが、何とか声を出す。
「いけませんね――人の食事の邪魔をするもんじゃありませんよ」
 シュレは、血で赤く染まった口を、笑みの形につり上げ笑う。
「――大丈夫か?」
「……まぁ、なんとかね……
 ……でも、かなり力を吸われたみたい……」
 自分でも、声と体に覇気が無いのを感じる。
「ふむ……やはり思った通り。
 あなた、かなりの魔力をお持ちのようですね。
 見てくださいよ――この溢れんばかりの魔力!」
 そう言ったかと思うと、シュレから、一瞬強い突風が放たれる!
「――ふふふっ、素晴らしいですよあなた」
「シュレ――お前だけズルイぞ!」
 完全に浸っているシュレに、ヴァイザは文句を言う。
「まぁまぁ、ヴァイザ。そう怒らずに。
 今度はあなたに、彼の血を吸わせてあげますから」
 俺からしたら、もう遠慮して貰いたいところなんだけど……
 すると、シュレがこちらに、
「今日のところは、このまま失礼致します。
 街や村を襲うより、あなた一人を狙った方が良さそうなので。
 しかし、あなたの魔力が戻ったら、またお会いすることになるでしょう。
 次は、ヴァイザがお世話になると思いますが」
 一方的に宣言し、そのまま二人の姿は消えた。
「……あいつら、また来るって言ってたぞ? 大丈夫か?」
 心配した顔で、クーガは俺の方を見る。
「……まぁ、正直もう会いたくないけど……
 奴らを倒さないと、依頼完了にならないし……やるっきゃないでしょ。
 逆に言えば、俺を狙って来るのなら、準備して待ってれば良いだけの話。
 ……今回は油断したけど、次は――絶対に勝つ!」