ルーン村はさびれていた。
 元々村人がそんなに多くないうえに、次はこの村に魔族が来るかもしれない、という不安から、ほとんどの村人が他の村や街に避難したらしい。
 それゆえ、情報らしい情報は得られなかった。
 俺達は、村にただ一つの宿屋の酒場で、軽い昼食を食べながら、今後のことを話し合っていた。
「――で……これからどうするかだよね……」
「どうするも何も、後は魔族が村に来るのを待って、来たら倒せば良いんじゃないか?」
 あっけらかんとしてクーガが言う。
「でも確実に魔族が来るって保証はどこにも無いし……
 『待ってたけど、結局来ませんでしたー』じゃ意味無いからね……」
「けど、他に対策の立てようもないんだろ?」
「いや、そりゃそうなんだけどさ……」
「だったら魔族が襲ってくるのを待ってりゃ良いんだよ」
 確かにそうなんだけど、ただ待つってのは、俺の性分に合わないんだよなぁ……
「まぁ、気晴らしに散歩でもしようぜ!」
 そう言って俺の背中を、ぽんっ、と叩く。
「……まっ、いっか」
 クーガの元気なんだか、ただ何も考えてないだけなんだか、よく分からない後押しを受けて、俺達は酒場から外へと出る。
 外へ出ると、村の空気は、さびれているという状況も加わって、少し寒さを感じた。
 散歩がてら、魔族が来た時のシミュレーションでもしてようかなぁ……
 そう思って、二人で街の入り口の方に向かうと、ちょうど街道の方から二人組の男が歩いてきた。
 一人は、長身で、青く長い髪。もう一人は、金髪で、髪は後ろになでつけてあり、青髪よりは少し背が低いが、がっちりとした体型。
 デザインは違うが、共に軽装鎧で、剣を差しており、いかにも傭兵といった感じである。
 二人とも二十代前半くらいだろうか。女だったら、声をかけられれば付いて行きたくなるような美形である。