魔族は、その隙に立ち上がり、右手に魔力で黒い剣を生み出す。
 そこへ間髪入れず、クーガが突っ込む!
 剣と剣が交差し、黒い火花を散らせ――
 クーガは、その勢いを殺さず、相手の剣をはね上げる!
 そして、空いたわき腹に向かって剣を繰り出す!
「ぐっ……」
 しかし、魔族が直前に大きく後ろへ跳んだ為、致命傷には至らなかったようだ。
 ――一分にも満たない攻防だが、クーガの奴、言うだけの事はある……
「……に……人間風情が……よくも……」
 わき腹を押さえ、毒づく魔族。
「――その人間風情に、これだけ押されてるのは、どこのどいつかな?」
「……こうなったら……これでも食らえ!」
 そう叫ぶと、無数の小さな魔力球を自分の周りに生み出し、散弾的にクーガへと放つ!
 しかし、その数をモノともしないくらい、剣でことごとく切り伏せるクーガ!
 これは、一流の剣士でもなかなか出来る芸当ではない。
「ペリシ・ショット!(滅光散弾)」
 その間にも、呪文を唱えていたらしく、魔術言語を口にするクーガ!
 光の散弾が飛来し、魔族の肩や足などに命中する!
「……こ……この俺が……人間なんぞに……」
 苦しそうに大きく息をしながら、ヒザをつく魔族。
「これで……終わりだな……」
 最後の審判のごとく、冷たく宣言するクーガ。
「……俺は……俺は……負けねぇ!」
 そう叫ぶと、最後の力を振り絞っているのか、魔族は巨大な黒い魔力球を生み出し始める!
 しかし、それに慌てず騒がず、クーガは呪文を紡ぎだす。

――全てを束ねし神々よ
  汝の怒れる力を導き
  永久の時空の彼方より
  無限の大地に向け
  今こそ怒りを解き放て――