俺が、どうしたもんか、と悩んでいると、宿屋の扉を開けてクーガが戻ってきた。
「どうだった?」
「一応、魔族の足取りは掴めた」
 近くのテーブルに腰掛け、そう答えるクーガ。
「――やつらは、この街を襲った後、周辺の村も襲ってるみたいだ。
 周辺の村で、まだ襲われてないのは、この街の北にあるルーン村だけ。
 ――となると、次はそこだな……」
「よしっ! じゃあ今日はしっかり食って、ゆっくり寝て、明日の朝、出発ってことで!」
 気合を入れ、さっそく食事へ向かおうと、店の外に足を踏み出した瞬間――
 どぉうんっ!
 少し離れた場所から、爆発音が聞こえた!
 俺とクーガは、顔を見合わせ、音のした方へと駆け出す!
 逃げ惑う人々の波をかき分けて向かうと、騒ぎの中心に一匹の獣の姿が見えた。
 薄い灰色の肌に茶色の獣毛、頭にはねじれた二本の角、その下の方には、血を思わせるような赤い眼が光っている。
 ――魔族だ――
「やっぱり、ヴァイザ様の言う通りだ。この街はおもしれぇ!」
 魔族が、笑いながら叫んでいる。
 そして、俺達は、魔族から数メートル離れた位置に立ち止まる。
「なんだ貴様らは!?」
 近くの建物を破壊しようと上げていた手を下ろし、俺達に聞いてくる魔族。
「はっ! てめぇに名乗る名前なんぞないね!」
「なんだと?」
 俺の挑発に、低く怒った声で、こちらを睨んでくる。
 ――やっぱり低級魔族だな。俺の挑発に簡単に乗るなんて。
 俺がさらに挑発してやろうと口を開けた時、
「タキト、ここは俺にやらせてくれ」
 と、小声で俺に言うクーガ。
「……俺だってやりたいんだけど」
「お前は、さっき盗賊やっただろ?」
「えー。盗賊と魔族じゃレベルが違うじゃん」
「まーいーから、まかせろって」
 そう言って一歩前に踏み出す。