アボットの街は、遠目から見てもヒドイ有り様だった。
 街のいたる所で建物が破壊され、大通りを歩いていても、ケガをしている人や建物を修復している人が目についた。
「……ヒドイことするな……」
 その状況に、しぶい顔をするクーガ。
「……まぁ、魔族の目的達成に一番効率的なのが『街を襲うこと』だからね……」
 俺は、大通りの先を見つめながらつぶやいた……
 ――何故、魔族が街や人間を襲うのか。
 理由は単純である。
 人間が、何かを食べることによって生きているように、魔族も食事をする。
 じゃあ、魔族は一体何を食べているのかと言うと――
 ――人間の、恐怖や苦しみなどの負の感情と血なのである――
 生きていく為に人間の負の感情を吸収し、自分の力を高める為に血を――特に強い魔力を持った人間の血を好んで飲む。
 その両方が揃えられて、一番効率的で手っ取り早いのが、街を襲うことなのだ。
 その結果、時々こういった被害が出る。
 ――確かに。
 人間も生きる為に、他の生物の命を摂取している。
 しかし、自分達が人間である以上、自分達の身を守る為に戦うこともある。
 その為に、俺達はここにいるのだ。
「こんな街を増やさない為にも、襲ってきた魔族についての聞き込みを始めよう」
 俺とクーガは二手に分かれて、聞き込みを開始した。