「こ……こいつ、油断したらヤバイぞ!」
 俺の実力を理解したのか、手に得物を持ちながらジリジリと俺を囲む盗賊達。
 ……ふっ……そのジリジリが命取り!
 俺はすでに呪文は唱え終わっている。
「エア・カレイド!(風衝円舞陣)」
 俺を中心に、円形状に風の衝撃波が襲う!
 俺を取り囲んでいた盗賊達は、全員木の葉のように吹き飛ばされる!
 油断したらヤバイ、とか言って、魔道士相手にジリジリと近付いてる時点で、じゅーぶん油断している――
 ――見ると、まともに衝撃波を食らって気絶したのか、誰一人起き上がる者はいない。
「……ほおー……やるじゃん」
 その声に振り向くと、クーガが感心したような顔で近づいてくる。
「――まっ、これくらい当然でしょ♪」
 その言葉に、得意げになって胸を反らす俺。
「さてさて……じゃあやることやっちゃいますか!」
「やることって……?」
 眉をひそめて聞いてくるクーガには応えず、俺は気絶している盗賊達のふところを漁りだす。
「……タキト、何やってんの……?」
「もちろん――金目の物没収してるに決まってるじゃん♪」
「…………」
「こうしておかないと、また体制立て直して悪事働くでしょ?
 だからこうやって、悪事を働く資金を奪っちゃえば、再犯防止にもなるし――その上俺のふところも暖かくなるし♪」
「……それって没収じゃなくて、強盗って言わないか……」
「違うよー、これはあくまで没収なの!
 それに悪人から金品を没収してはいけません、って法律なんか無いんだし。
 このままにしておいても、どうせ警察に引き渡したら金品没収されちゃうんだから、誰がやったって同じでしょ? だから良いの良いの」
 俺の言葉に、クーガが少し呆れ顔で見てるけど――気にしない気にしない。
 一通り、金品を強奪……もとい没収した後、俺はクーガの腕を掴む。
「さてと……じゃあこいつらのことは、あとは駅員にまかせておいて……
 ――アボットへ行きますか!」
 未だに呆れ顔のクーガの背中を押しつつ、俺達はアボットへと向かった。