その後お母さんは斗侑真の方を
向いてゆっくりと話し出した｡


事故の時に一緒に居た女性の事も
知り合いだと思って居た斗侑真の
お母さんは女性に対しても謝罪を
したいと言った｡


堅い表情のまま
｢知り合いなんかじゃありません｡その人は主人の愛人です｡｣そう言ったお母さんに斗侑真のお母さんは一瞬驚いた後｢私も愛人に主人を取られました｡｣と言って笑った｡


｢私ね…本当はその時期.将人と楓を連れて死んでしまおうかと真剣に考えてたの｡もうどうしていいか分からなくてね…｡でも瞳さんが居てくれたから頑張ろうって思い直したの｡自分も中傷を受けて辛いはずなのに‘お互い頑張って子供を立派に育てて私達を捨てた人を見返してやりましょ｡‘…って｡その言葉がどれだけ私の支えになった事か…｡｣


この日お母さんの目から初めて涙が流れた｡


｢緒方さん…私達が今ここに居る
のは瞳さんのお陰なの…｡貴方の
お母さんのお陰なのよ｡｣


｢母がそんな事を…｡｣


その時だった急にお兄ちゃんが
立ち上がり斗侑真に向かって頭を下げた｡


｢緒方さん俺…母の話しを聞く前
から本当は緒方さんに謝りたかっ
たんです…｡すみませんでした｡｣


｢お兄ちゃん…｡｣