「今の女は今までの女とは違う。
女のお腹の中に俺の子供が居る。
頼む別れてくれ!!もう俺はこの家
に二度と戻る事はない…。離婚届
には俺のサインはしてあるから。」


「勝手な事言わないでよ!!将人も
楓も貴方の子供なのよ!!あの子達
に対して愛情は無いの!?父親とし
て自分がどれだけ最低な事をして
るか分からないの!!」


「今の俺にとっては女とお腹の子供が一番大切だ!!」


そう言ってお父さんは私達を捨てた。


お母さんは自分の事より私とお兄ちゃんを捨てて行ったお父さんを許せなかったと言う。


「母さん…じゃあどっちにしても
親父は俺達の元には帰って来る気
は無かったって事か…?」


「……そうよ。それにお父さんが
死んで分かった事なんだけどね
生命保険の受取人がその女の人
の名義に書き換えられてて揚げ句
には死んだ人の骨なんていらない
って…。結局は形だけの妻だった
私の元に帰って来たのは私達を捨
てたお父さんの遺体だけだった。」


私はお母さんの涙一つ流さない顔
を見てお母さんの精一杯のプライドを感じた。