斗侑真の匂いを思い切り吸い込んで自分の中に注入して行く…。


私の大好きな斗侑真の香水の匂い…。


いつものように私を癒してくれる。


ふと…視線を感じる。
その先には…さっきのベルボーイの男の子。


目が合うと逸らされ顔をまっ赤にして下を向いてしまった。


「人前でごめん。恥ずかしいよね…?」


「別に…俺は楓が飛び込んで来てくれて嬉しい。(笑)でもちょっとあの坊やには刺激が強すぎたみたいだな…。(笑)」


再び見ると…男の子が私達に向かって頭を下げている。


私も慌てて頭を下げる。


「あいつ.ここに配属されてたのか…。
今年の入社式の時に俺あいつと本社で会ってんだ。
あの坊やすげぇ…緊張しててさ。(笑)俺の事覚えてくれてたんだな…。」


私は斗侑真が開けてくれたドアから車に乗り込む前にもう一度男の子に頭を下げる…。


思い出していたんだ…。
自分が入社した時の事。
期待と不安の中で入社した私には本社で盛大に行われた入社式から未知の世界の始まりだった。


私は幸運な事に絢と一緒になれたけど…他の仲間達はそれぞれ違う場所に配属されて行く。


不安だっただろうな…。