今の楓に何度.掛けても無理だと思った。


携帯が三浦の手に戻るまで待った。


楓の側に居ない俺にとって頼める
相手は三浦しか居ない…。


少しして三浦の携帯に掛ける。


「緒方?さっき観月と話したんじゃないの…どうした?」


俺は自分の気持ちを正直に三浦に話した。


なぜか三浦には素直に話せた…。


三浦は誰が見ても綺麗だと思う。


でも正直俺は三浦の事を女だと
意識した事がなかった。


悪い意味ではなく三浦の性格が
そうさせてるのかもしれない…。


「夕方そっちに行くから楓を連れ
て来てくれないか?俺…やっぱり
楓を失いたくないんだ。」


「わかった…。緒方…今度こそ観月を離しちゃダメよ。」


「あぁ…約束する。」



助手席の楓を見ると俯いている。


横顔を見て楓に触れたくなる。


愛しいと思う。


そんな俺の気持ちをさっきの楓の
言葉が俺を躊躇させる。


もうお前には俺なんて必要ないのか?


名前で呼ばれなかった些細な事
でも不安になっている俺が居た。


楓…俺やっぱりお前だけは失いたくないんだ。


もう二度と離さないから…。


もう一度俺にチャンスをくれないか?