◆◆◆◆                      ‐バタン‐
               玄関の扉が閉まった途端に俺の目
から涙が流れ落ちた…。


扉の向こうから微かに楓の泣き声
が聞こえてくる。


今すぐにでも抱き締めてやりたかった。


俺の手で楓の涙を拭ってやりたい…。


会ってしまうと自分の決心が
揺らいでしまう事が怖かった。


俺は逃げていたんだ。


なのに…楓はちゃんと正面から
俺にぶつかって来てくれた。


こんな俺に愛してると言ってくれた楓…。


いっそ.このまま何もかも捨てて
楓と2人で誰も知らない所に行ってしまいたかった。


楓さえ側に居てくれたら俺は他に
何もいらない…。


やっぱり…楓を諦める事なんて出来ない。


楓の為を想って選んだ別れに迷いが出る。


俺と一緒に居れば楓を苦しめて
しまう事も分かっていた。


俺の背中から見える楓のお父さん
の影を俺の精一杯の愛の力で消し
てしまう事が出来るだろうか…。