もう一人は嫌だ…。


苦労続きだったお袋も2年前に
癌で亡くなった…。


唯一の親孝行は俺が更正して大学
に入り今のホテルに就職出来た事だった。


本社勤務が決まった時は誰よりも
喜んでくれた。


大学時代に一人暮らしを始めた俺
は就職してから5年目に今住んで
いるマンションを買った。


お袋と一緒に住む為に…そんな俺
の誘いをお袋は涙を流して喜んだ。


あいつが不幸にした以上に俺が
お袋を幸せにしてやりたかった。


そんなお袋も一度もマンションを
見る事無く癌が発見されて病院生活が始まった。


2度の手術の末…胃にも転移して
いる事がわかり…それが致命的になった。


見る見る内に痩せていくお袋を
見てまた俺は自分の人生を恨んだ。


なんで俺の大切な人を奪うのか…。


なんで俺ばっかり…。


そんな時お袋は言ったんだ。


「母さんの子供に産まれたばっかりに…ごめんね。」


その日から俺は思ったんだ自分の人生を否定するのだけは辞めようと…。