あの悪夢の日から俺は特定の人間
にしか心を開かなくなった。


誰も信じられない。


どうせすぐに俺に背中を向けて
去って行くんだ…。


誰とも関わらない。


ずっとそう思って生きてきた。


大学を卒業して今のホテルに就職
してからも人付き合いは苦手だった。


就職してすぐに何人かの女から
誘われた…見掛けだけで俺の事が
好きになったと媚びて来る女達…。


俺の中身なんてどうでもいいのか?


唯一俺の中身を見ようとしてくれたのが三浦だった。


アッサリとした性格で思った事は
ハッキリと口にする…。


三浦とは徐々に話せるようになった。


そんな三浦が出産の為に休みを
取る事になった時.後任として
本社に指名したのが俺だった。


俺に電話を掛けて来て三浦は言った。


「私が休みの間.安心して後を任せ
られるのは緒方.あんたしか居な
いのよ…宜しくね。」