いつもと変わらない日々
会社も何もかも同じだ。

1人の女性が、ロビーで転んだ
皆んな何もないように
通り過ぎる、僕も通り過ぎる人に紛れた
僕の足に何かが当たる、
彼女が落とした、書類のファイルだ
僕は仕方なく、拾い上げ
彼女へ手渡す。
『ありがとうございます。』
彼女は涙目で、そして、笑顔で
僕にそういい、足早にその場を去る。

僕は心で思った、こんな恥ずかしい事はない
大勢の人の前で転ぶ。
なんて滑稽な光景なんだ。
僕なら耐えられないだろう。
彼女は本当は強い人なんだろう。

いつもの僕なら考えもしないことを
考える僕がそこにいた。

家路につき、足早に自宅へ向かう
家に着くと、すぐにパソコンを開く
いつもの日常が変わっていた。

kakitsubataを開く

《 今日は最悪な日でした。
私はOLをしているんですが
今日、会社の真ん中でヒールが
折れて派手に転びました。
はずかしかったけど。
1人の社員さんが、ファイルを拾ってくれて
優しく笑ってくれた気がしました。》

目を疑った、こんな偶然が
あるのだろうか？
『まさか昼間のあの子が？』
いや！そんなはずない！
こんな偶然は世の中に起こり得ないことだ
頭の固い僕は、そう言い聞かせた。

次の日、会社で彼女を見かけた。
彼女は僕にそっと頭を下げた
僕も頭を下げ返した。

その日の更新には
《今日、昨日の社員さんを会社で
見かけました！
挨拶したら、返してくれた！
なんだろう。少し嬉しかった》

まただ、またこんな偶然が。
認めたくない自分がいた。

次の日も、また次の日も
偶然は重なった。

次の日、全体会議が行われた。
会社員として、最大にめんど臭い
月一会議だ。

扉を開けると、そこに
彼女はいた。

僕らは、お互いに軽く頭を下げる。

会議が終わり、部屋を出る。
自分のデスクに戻り、
パソコンを忘れたことに気づいた。

『何焦ってんだよ！』
自分に腹が立った。

急いで会議室に戻ると
彼女が何かを見ている。

（ドンっ）
彼女が見ていたのは、僕のパソコンだ
焦って、ドアに手をぶつけてしまった。

彼女が音に気づきこっちを見る。

僕は急いで、駆け寄りパソコンを
手にとってその場を立ち去る。

デスクに戻り、パソコンを見ると
やっぱり、kakitsubataが開かれていた。
『あぁ〜、見られた〜』
彼女がもし！そうだったら…
なぜだ！なぜ焦ってんだ？ん？

僕はたまらず、屋上へ駆け上る。

『はぁ…なんなんだよ！』

いつもの僕なら、どうでもない
何も感じないはずなのに……
心臓が痛いほど、ドキドキする。
なぜだろう？