ああ、もう。


人の神経逆撫でする人なんか、皆どうにかなっちゃえばいいのに。

皆、どこかに消えちゃえばいいのに。


そんな物騒なことを思いながら、教室を移動した。



足早に校内を歩く。

そっとそっと足音を殺して。

息を潜めて。

耳を塞いで。



誰にもこの姿を見られないように…。




大学はこういう時、便利だと思う。
同じ専攻でも違う授業や実技を取っていれば、顔を合わせることもないし、サークルも違うから注意してしっかり意識していれば、ずっと逢わずにキャンパスにいられる。
必修科目はもう全て単位を取っていたから、それも幸いだった。


本当なら。
正々堂々としていればいいのかもしれないけど、私にはそれが出来なかった。
元々僅かでしかなかった自信も、すっかりなくなってしまっていたから。


勿論、二人のことを知っている人は多いから、何かとウワサはまとわり付く。
それでも、全てをシャットアウトしたくて、彼から逃げ続けた。



仕方ないじゃない。

どんなことをしても好き、なんだから。

だからって、誰かをそれで困らせた?

一体どれたけの迷惑を掛けたというの?

教えてよ…。


ただ、『好き』なだけでも許されないの…?



想いは止め処なく溢れていく。
きっと、この想いは誰にも止められない。



スキ。

本当?

キライ。

本当?

ウソ。

本当に?

ダイスキ。

そう…。

まだ。

離れたくない。


繰り返される言葉たち。
リフレイン。
リフレイン…。
…気が狂いそうなほどに…。



気持ちはサヨナラを告げられてから、ずっと宙ぶらりん。
心の天秤は右に左にグラグラ揺れている。


ほんの少しでも、愛されたかっただけなのに。
この狭い世界の中で、私の願いは叶うことなく消えていったから。



「好き、なのにな…」


口にした後で。
一人ボロボロと泣いたんだ。
言葉にしてからこんなにもすぐに、枯れてしまう想いがあるなんて…。

出来ることなら知りたくはなかった。

知らずにいたかった。