「私、まだ…立ち止まったまま、なんだよ?」


言いながら、泣きそうになる。



「知ってます」



だけど、彼は私を見て、射抜くように真っ直ぐ見つめたまま動かない。



「佳人くんの前にいるのに、違う人の事考えちゃったりするんだよ?」



今にも、涙が出そうになる。




「はは…流石に、それは結構キツいですけどね。でも、物思いに耽っている先輩の傍にいるのは好きです」




そんな私を庇うように、彼はおどけた顔で笑ってくれた。