「佳人くん…」
「あ。雨、止んで来ましたね。じゃあ、そろそろ此処、出ましょうか?」
殆ど会話らしい会話もないまま、過ぎてしまった約一時間半の間に、あの痛いくらいの激しい雨は止んでいて、空の向こう側には眩しい光が見えた。
今では二人の間の暗黙のルール。
雨の日も晴れの日も、少し寄り添うように、静かに…。
そんな風に穏やかに過ごしていこうと…。
そうでもしないと全く前を向けないような気がしていたから、彼からの最初の提案に、私は素直に従った。
彼の提案は、私の揺れる心を何時だって、落ち着かせてくれる。
沈んだ気持ちを浮上させてくれる。