「あやめさん…もう、大丈夫だから…俺が此処にいるから…泣かないで…」
ぼろぼろと零れ出す涙を指で拭う。
彼女は、俺の顔を見て小さく「ごめんね」と言って来た。
そして、背伸びをして俺の切れてしまった口の端をそっとなぞって、もう一度「ごめん」と囁くと、ぐっと近寄ってきてゆっくりとキスを落としてきた。
「好き…」
「あやめさん…」
「ごめん。よしとが、好きだよ…」
泣きながら、キスをくれる彼女。
それが本当に愛しくて、俺は「大丈夫だよ」と、背中を何度も撫でる。
「…ふっぅ…っ」
そして…その日最後にしたキスは、甘い涙の味がした。