好きな人に好きな人がいる。

でも、俺のこの想いは捨てることが出来ない。
折角芽吹いた気持ちだったから。
彼女の笑顔を…なんとか守りたかったから。



他の奴からしたら、俺のこの想いは不毛なだけだと思うかもしれない。

なんの意味もないのかもしれない。


『おまえ、大丈夫?』


ゼミで一緒になってから仲良くなった石川燈耶(いしかわとうや)には、呆れてそう言われる始末。
それくらい、ひたすら彼女だけを見守る日が続いた。



ストーカーか。



自分でも、バカなことをしてると分かってる。

分かってる、けど。



「仕方ねぇじゃん。それでも好きなんだよ…」


またぽつりと呟いて、俺は降り出してきた雨を擦り抜けるように小走りになって目的の場所へと急いだ。