だけど、その口唇は、予想に反して、直ぐには降りては来ず、どうしたんだろうと薄目を開けたら、それだけで蕩けそうなくらいの笑みをしてる彼がそこにいて…。
不意をついて、柔らかく羽根のようなキスを落とされた。
「…ばか…。ずるい」
カァッと自分でも分かるくらいに赤く染まった顔を見られたくなくて、背を向けようとすると、それを咎めるようにぐっと彼の方に引き寄せられた。
「かわいいあやめが、悪い…」
そう責められて、反抗しようとするのに、抱き締められた腕の中が心地良過ぎて、安心し切ってる今の状況じゃ到底無理だった。
だから、観念してそっと彼の背中に腕を回すと、ぴくっと彼が体を揺らした。