自分でも狡いとは分かってる。
こんな風にこの人を巻き込んではいけないとも。
だけど。
やり切れない想いを、一人抱えていくことはもう出来なかった。
彼の想いに縋ることしか、出来なかった。
所詮、環境は狭い大学のキャンパスの中。
皆はヒマを弄んでる。
だから、平気な顔をして様々なゴシップを楽しむ。
人の秘密は蜜の味。
人の不幸は蜜の味。
そうして、私達のことは瞬く間に周囲へと広がっていった。
まるで、水を得た魚のように。
『ねぇねぇ、知ってるー?あの月原さん、今1年の海野って子と付き合ってんだって!この前一緒のとこ見たけどさぁ、なんか月原さんとその子じゃ、ねぇ…』
『月原さん、根は真面目だけど、見た目かなり派手な感じだしね。あの、ほら誰だっけ?元カレ…あ、そうそう!甲斐彬!あのチャラ男!あんなんみたいたら、分からなくもないけどねー。見栄えはすんじゃん?』
『えー?あんた知らないのー?!フラれたの月原さんじゃん。てか、2ヶ月も保たないとか、どんだけつまんねーんだよって感じなんですけどー!』
甲斐くんと別れた時と同じように、ギャハハハッ!…と他人事だからと好き勝手なウワサが流れ…。
また、苦い想いが胸を刺した。
キライ。
本当?
スキ。
本当?
ウソ。
本当?
ダイキライ。
本当に?
ウソ。
そう、本当は。
まだ、離れたくない…。
もう、幾度となく繰り返された想いに、私のどこかは確実に壊れていた。
ねぇ?
いくつこんな想いを重ねたら、貴方は私の中から消えてくれるの?
胸が痛くて張り裂けそうだよ…。
出来ることならば、貴方という嵐から抜け出したい。
そうしてそのまま、私は海の底で眠る貝になりたい。
だけど、この頬を伝う透明な涙は強く心を縛り付けて、どこまでも離してはくれなかった。
なんで、こうなっちゃうんだろう…?
やることなすこと全てが裏目に出てしまう。
私、なんで、こんな所で生きているんだろう…。