近くにいた老紳士の奥さんという人に倒れた状況を聞くと、急に胸を押さえて倒れたということだった。

状況から察すると、恐らくは心筋梗塞…

脈も触れず、呼吸も止まっている。顔色がどんどん悪くなっている。

「こちらにはAED(自動体外式除細動器)はありますか?」

俺が女将に聞くと、

『あります。』

そう一言言うと、どこかに取りに行った。

俺も一応、職場の研修で心肺蘇生法はやった。

やらなければこの人は死んでしまう。

気道確保し、口の中の異物がないかを確認する。

人工呼吸をし、心臓マッサージを施した。

『慎吾!』

ひとみが慌てた様子でやって来た。

ひとみに状況を話し、心配蘇生をしていること、従業員がAEDを取りに行っていることを説明すると、

『たぶん、心筋梗塞だね。ナイス判断!後は私に任せて!』

ひとみは慣れた手つきで心肺蘇生を行っていった。

さすがプロ、全然違う…

『AED持って来ました。』

女将が髪を振り乱してAEDを持ってきた。

『大丈夫、絶対助ける…』

ひとみは、老紳士の浴衣を胸が見えるように開けて、電極を貼った。