「お前さ、もうちょっとなんか、
反論ないわけ?本当クソな奴だな」

相変わらずけなしてくる美少年。
顔立ちは完璧なのに可哀想だなと
心の中で思った。

路上ライブをやりにきたのに
まともに路上ライブができない状態が
20分続く。あー、このままだと
何も意味がない。

こんな男に構ってられない。

私は、美少年を無視して歌い始めた。

暖かい風の中で
自信のない風貌と
自信のある歌の組み合わせが
入り混じって複雑な気持ちで歌い続けた。

美少年は文句を言いながらも
私の歌を聴いてはくれていた。
1時間歌い続けたが、
美少年以外のお客様はいなかった。

人はなおも行き交っている。


これが私の路上ライブ初日だった。