だが、実際に病室に踏み入れると、そんな怒りはふうせんのように、しゅうっとしぼんだ。


弱々しい笑みを浮かべて、腕に包帯を巻いている大学生の彼が、とても寂しそうに見えたのだ。


「春川の学年主任である、北原です。こちらは、春川の友人の、如月です。」


先生が、淡々と名乗る。

「は、初めまして。如月 舞羽です!」


あわてておじぎをすると、ふっと彼はほほえんだ。

「初めまして。雪村(ゆきむら)と言います。どうぞ、座ってください。」



彼はそう言って、隅に束ねてあった折りたたみのイスを出してくれた。