「でも、ただ殺すんじゃ面白くないわよね」

桜色の唇から物騒な言葉がまた飛び出してくるのを、あたしはまだ動揺を抑えきれないまま見つめていた。

「だから、ゲームをしましょう」

視線で先を促すと、メリーさんは続ける。

「あんたが勝ったら友達は返してあげるけど、わたしが勝ったらあんたには死んでもらうの。どう?」
「受けてたつ!ルールは?」
「簡単よ」

メリーさんはぱちりと指を鳴らした。
途端に教室の四隅の色濃い闇に覆われた空間がざわざわと揺らめく。虫のはうような早さで暗闇が壁を床をじわじわ侵食する。
その内、あたしに近い位置の廊下側の角の闇から、ずるりと何かが這い出した。
白い、白い小さな細いものがやけに鮮明で目が離せなくなる。

(……な、にあれ)

またずるりと前に這い出して来て、ようやく何か分かった。

指だ。

人間と同じ形の、華奢な指が五本。後には手の甲が続き、手首、腕と段々太くなる。
あの関節の妙な線は何だ?
あんなもの、生きている普通の人なら有るはずがない。
だけど、あたしはあれを持つものに一つだけ心当たりがあった。
人形の関節だ。
小さい頃遊んだ人形の腕もあんな風だった。

じゃあ、あれは。