「シカトすんなよー」

「ちょっとあんたに用あんだよ」

「すぐ終わっからよ」

「─やっ!離して!」


容易に両腕を掴まれ、逃れようと抵抗するも意味がないに等しい。


「言うこと聞いてりゃ何もしねぇでやるからよ」

「大人しくしてろよ」


二人がかりで引きずられるように、意思とは裏腹な方角へ連れて行かれる。


「やだ!離してよ!誰か助けて…っ、う゛っ」


震えながら精一杯声を張り上げたら、容赦なくお腹に一撃をくらわせられた。


─少し久しぶりの感覚。

身構えていなかったからか、半端なく痛い。


「大人しくしてろって言っただろ?」

「騒ぐなよ」

「─げほっ」


もう、女の子なんだから手加減してくれてもいいんじゃないの?わたし見るからに弱そうでしょ。この野蛮人め。


……痛くて苦しい。


こんな時に、こんな時だからこそ、あの男の顔を思い出してしまう。


わたしが誰よりも軽蔑する、あの男を。