「ん?」


頬杖をついてなぜか深瀬くんのことを考えてぼーっとしていたら、軽く背中を叩かれた。

振り返るとおかしいくらいにんまり笑っている、後ろの席の上村茉希。


「ね、森野くんって咲良のこと好きなんじゃない?」


あ、この顔の原因は恋バナか。

こっそり耳打ちするもんだから何かと思ったわ。


「いきなり何言ってんの、茉希ってば」

「一年の時から思ってたんだよね。何かにつけて咲良をいじるし、咲良とまた同じクラスになれて嬉しそうだし!」


茉希も森野も二年連続で同じクラス。でも茉希が言うようなことなんて微塵もない。

森野はわたしのことを女として扱わない。もちろんわたしもあいつを異性として見たことはない。単なるクラスメイト。

茉希はなんでもそっちに結びつけたがるからな~。


「ないわ茉希ちゃ~ん。残念ながら完全妄想で終了ですね~」

「だって森野くんが自分から話しかける女子って咲良だけじゃない?」

「茉希だって話すでしょ」

「だからそうじゃなくて…」

「授業始めるぞー!お、全員ちゃんと席についてるな。ではテキスト五ページ目…」