「疑似恋愛でも楽しめたよ。すごく。その分深瀬くんを振り回しちゃってごめんね。たくさん迷惑かけたのに、わたしの家のことにまで関わってくれて…。さっきはすごく嬉しかった。本当に、本当にありがとう」

「…」


…今度はちゃんと笑いやがって。

今現在も俺は逢川に振り回されている気がする。


「けど深瀬くんを本気で好きかって聞かれると、作り物じゃない咲良は即答できないんだ。ずっと嘘をついていて、謝って済むことじゃないけどごめんなさい。許してもらえるまで何でもするよ。いくらでも殴っていいし、何でも言うこと聞くよ」

「…ばーか。とち狂ったこと言ってんじゃねぇよ」


その顔で何が『いくらでも殴っていい』だよ。馬鹿にも程があるっつーの。


「だって、落とし前つけないと」

「生意気言ってんじゃねぇ」

「…深瀬くん…」

「お前にしてほしいことなんてねぇよ」 
 
「…ほんと、深瀬くんは優しいんだから」

「また狂ったこと言いやがって」


これは優しさでもなんでもねぇ。


きっと俺は、色んな形でお前をたくさん傷つけた。

でも俺はどんな理由であれ信じていたお前に嘘をつかれていた。


それを責めるつもりも被害者ぶる気もない。

痛み分けみてぇなもんだろ。