胸ぐらを掴む俺の手をどうにか離そうとする逢川の親父の手。

でもその力は思ったよりも強くなく、自分より弱い相手を傷つけているのだと思うと、腸が煮えくり返りそうだった。


「ふざけんな!!」


胸ぐらを掴んだまま、無理やり壁に押しつける。


「ゲボッ、」


俺より背が低く少し見下ろす形になった。

いい歳したおっさんとは思えないほど若々しくチャラい。こいつが逢川の親父だとは信じられないほど。


「お前、んなことしてタダで済むと思うなよ。ガキだと思ってつけあがってるとイタい目見るぞ…っ」

「てめぇは何の為に家族を、自分のガキを傷つけてんだよ」


手に力が入る。

今にも殴りそうになるのを、俺の僅かな理性が必死に食い止める。


「──っゲボッ。ただのしつけだろうが。ガキにはわかんねーだろ」

「しつけだ?!てめぇのしてることはただの暴力だろうが!!」

「何言ってんだ!大体、人の家のことに口出ししてんじゃねぇよ!咲良の部屋をめちゃくちゃにしやがって!勉強ができなくなるじゃねぇか!咲良の好きなものを奪うな!何考えてんだ!部外者が首突っ込んでいいもんじゃねぇんだよ!」