「休学だから辞めるってわけじゃねーけど、逢川は休むこと自体がレアだから、休学届けなんて絶対何かあったに決まって…」

「あっ!」

「おい!深瀬!」

「どこ行くんだよ!」

「深瀬!」


──あいつらのうるせぇ声が聞こえる。

でも今の俺には気にする隙は微塵もなかった。


「走らないでください!」 

「深瀬さん?!どこに行くんですか?!」


看護師の声も届きはしない。

逢川のことだけを考えて、俺は無我夢中で走っていた。




─────



『~♪』


久しぶりに走ったせいか息切れがハンパねぇ。乱れた呼吸を整えながら、インターホンを押した。


「──っ!くそっ!」


何度押しても反応がない。耐えきれず玄関のドアを叩いた。


ちくしょう、いねぇのかよ!!


「逢川!俺だ!出てこい!逢川!!」


いくら叩いてもどんなに呼んでもドアは開かず、ドアノブに手をかける。


「─っ」


思いがけずドアが開く。


居留守か?!


「逢川!逢川!いねぇのか?!」


家の中、一階を片っ端から探しても誰もいない。

階段を駆け上がり二階へ進んだ。