「親なら最後まで親でいろよ!親になるって決めたんなら貫き通せよ!親なのに迷ってんじゃねぇよ!」

「…ね、ねぇ…。それって、圭悟はわたし達が親でいいってこと…?」


目を丸くして俺を見つめる母親。

わざわざ聞いてんじゃねぇよ、このやろう。


「いいも何も、俺の親はお前等しかいねぇだろ」

「──っ!圭悟…っ!」

「うおっ、やめろ…」

「圭悟ーっ!愛してるーっ!」


抱きつき大声を上げて泣きじゃくる母親。


こっちは病人だってのに。痛ぇよ、ちくしょう。

なのに、照れくさくても嫌な気持ちなんて微塵もなかった。

16にもなってだせぇけど、どことなく幸せすら感じていた。


胸を張って、俺はこの人を親と呼べる。

この人が俺の親じゃなくなることはない。

その嬉しさは絶大で、俺は生まれてきて良かったんだと、生きていていいんだと言われている気がした。


──だけど。


一度捨てられた記憶が無くなるわけじゃない。

忘れたことにはできても、本当に忘れることなんてできない。


それほど俺にとって大きく埋めることのできない穴だ。どんな理由にせよ捨てられたことに変わりはない。

生まれた瞬間に捨てられていたからこそ、過敏になってしまう。

これだけ俺を必要として俺のことを考えてくれているのに、人間として腐っている俺は懲りもせずに執念深く疑ってしまう。


また、捨てられる日がくるのではないかと。