「圭悟はどう思ってる?わたしに対する本当の気持ち、教えてほしい。会いたくないなら二度と会わないようにするし、もし…」

「会いたくねぇのはそっちだろ」

「…え?」

「会いたくねぇのは、俺を嫌ってんのはてめぇじゃねぇか」

「何を言っているの?そんなわけないでしょう?」

「は?」


そんなわけないって、それこそんなわけねぇよ。


「わたしが圭悟を嫌い?馬鹿じゃないの?ありえない。馬鹿も休み休み言いなさい」

「あ゛?なんだと?」

「あなたを嫌ったことなんて一度もないわ!ひどいことを口にしたとは思ってる!でも恨んだり憎んだことはない!ずっと会いたくてたまらなかったんだから…っ」


我慢していたのか、一気に頬に涙が溢れ出した。

久しぶりに会った今でも、俺はこの涙が苦手だと思った。

その涙から目を背ける俺は、あの頃から全く成長できていない。


「…急に手のひら返しやがって、いきなり跡取りでも必要になったか?どんな腐った人間で、戸籍上の繋がりはとりあえずあるからな。頭さえ良けりゃなんでも…」

「──っ!」

「っ゛!何すんだてめぇ!」


音が室内に響き渡るくらい、大きな張り手をかまされた。

一瞬にして怒りがこみ上げる。


「あなたがそんなだからわたしは迷ってしまうのよ!あなたにはわたしじゃなく他の親が良かったんじゃないかって!」

「……は?」


泣きながら声を荒げるこの人は、とても40近いババァには見えなかった。

16の俺からしても、ガキのようだった。


「あなたが賢かったからわたし達があなたを選んだと思っているんでしょうけど、それだけじゃない。むしろ知力なんて二の次よ」