…本当の本当はね、お母さんのこと、深瀬くんに口出しするのが怖かった。

はっきり言えば嫌だった。

もしもそれが原因で深瀬くんの逆鱗に触れて、わたしが嫌われてしまったら。

これまで縮めてきた距離が消え去ってしまったら。

言わなきゃ良かったって、きっと後悔しそうだから。


それに最悪の場合、深瀬くんの幸せを願ってしたことが、彼にとって更に傷を深める結果になってしまうかもしれない。

そうなってしまったら、わたしはわたしを一生恨み続けなければならなくなる。


だから頭が痛くなるほど、悩んで、悩んで、悩んで。

正しい選択ができたのかわからず、夜は一睡もできなかった。
  

それが今、この扉の向こうに、結果が出ている。

ドアを開けて、深瀬くんがわたしを見て微笑むか、拒絶するか。


いや、わたしを見て微笑むことなんて普段からしてないから、とりあえず拒絶されるかされないかだな。


「……」


自然とため息がこぼれる。


う。む、胸が、ドキドキしてきた。

緊張する。


どうか深瀬くんがわたしに敵意を向けませんように。

あの目でわたしを見ませんように──!!


祈るような気持ちでドアノブに手をかけ、恐る恐る開けようとした時──。