そこまで言うと、お母さんの瞳から涙がこぼれた。

声も少し震えているようで、嘘偽りなどないんだと実感させられる。


「でも余りに可愛くて甘やかしすぎちゃったのかな。中学に入ると毎日、学校や警察から連絡がくるようになったの」

「──」


学校や警察…。


「その頃からわたし、おかしくなってたのかも。圭悟には何を言っても伝わらなくて、どう怒るのが正しいのかもわからなくて、夫にも当たり散らして…。育て方を間違えてしまったのかと自分を責めて、色んな理由をつけて、何かのせいにばかりしていた」


鞄からハンカチを取り出し涙を拭う、深瀬くんのお母さん。

その姿を見てもらい泣きでもしたのか、わたしの目もまた潤んできた。


「そんなわたしにストレスを感じていたせいか夫が病気になって…。発見が遅かったみたいで、腫瘍が見つかってから二ヶ月も経たないうちに亡くなったの」

「そんなに早く…」


晋からは大まかなことしか聞いていなかった。

愛する旦那様との別れが早すぎて、ショックは大きかっただろうな…。


「病気のこと、圭悟に伝えようと思ったけど、夫に止められて。圭悟が知らないまま逝ってしまったの。ちょうど夫が生死の境にいる時に警察からまた圭悟が補導されたって連絡がきて、どうしたらいいかパニックになって、そこら辺から記憶が曖昧。精神的に限界だったんだろうね。わたし、弱すぎだね」


目を赤くして苦笑いをするお母さん。

わたしはどう反応したらいいかわからず、すごく困った。きっと顔にも出ていたと思う。