もう思っていることを言ってしまおう。

また深瀬くんのお母さんに会えるとは限らないし、内情を知った癖に知らないふりをするのも、騙しているようで気持ちが悪い。


「はっきり言えば最低です。お母さんが辛かったのもわかります。でもわたしが深瀬くんだったら生きていけない。きっと死にたくなる」


実の親じゃなくても、お父さんを亡くし、たった一人のお母さんにまで見捨てられたら、簡単に自我は崩れ去ると思う。

そうならずにいまだに言いつけを守り続ける深瀬くんは、本当にすごい。


「…」

「深瀬くんがあなたに会いたくないのは当たり前です。あなたに会うのが怖いと思うし、あなたの顔を見るのが辛い。だけど謝りたいなら、思う存分謝った方がいいと思います」

「…でも」

「わたしは親になったことがないから、あなたの気持ちを全て理解することはできません。深瀬くんに会いたいと思う気持ちは、純粋にただ会いたいだけなんですか?それとも自分のしたことの後ろめたさから逃げたくて、許してもらいたいからですか?」


わたしを見る深瀬くんのお母さんの目が揺れてる。

その目を逸らさずに、わたしは彼女を見つめ続けた。


「……許してもらおうなんて浅はかなことは思ってないよ。でも後悔はずっとしてるの」

「…」


お母さんもわたしから目を逸らさない。真剣にわたしと向き合っているように思える。


「恥ずかしいけどわたし達のこと、知ってるんだもんね。…三ヶ月くらい前かな?気持ちが安定してきて、平常心でいられることが多くなったの。先生や庄司さんからそれまでの話を聞いて自分も当時の記憶が戻った時、わたしはどれほど愚かなことをしたんだって絶望したよ」

「…」


今にも泣きそうなお母さんに相づちをうつこともできなかった。ただ真剣にお母さんの言葉を聞いていた。


「圭悟とわたしは血縁関係はなくても、本当に可愛くて仕方なくて、大切で何にも代え難くて、自分達の子供だと心から思ってた。今でもそう思ってる」