──と無駄に意気込んだのも束の間、深瀬くんの顔を見た途端に胸が疼いた。


「よぉ深瀬」

「何しに来たんだよ」

「なんだその言いぐさは!せっかく来てやったのに!」

「暇人だな森谷」

「も り の だっ!」

「あははは」


憎まれ口を叩きながらもどこか嬉しそうな深瀬くん。

いつ見ても微笑ましいと思える二人のやり取り。


なのにわたしの心は違う所へでも行っているかのよう。愛想笑いしかできないなんて。


「てめぇ、昨日は来ねぇで何してたんだよ」

「──え。」


不機嫌そうな顔でわたしを見つめる深瀬くん。

昨日は来ねぇでって、もしかして深瀬くん、わたしのことを待ってたの?


「おいおい、俺の前でいちゃつくなよ」

「っ、はあ?!?!?!」

「ご、ごめんねダーリン。昨日はどうしても外せない用があって」

「来なきゃ良かったな。いちゃつくのは二人きりの時にしろよ」

「何言ってやがる!いちゃついてなんかねぇ!」

「じゅーぶんいちゃついてんだろうが」

「どこがだボケ!」

「わ、わたしちょっとお手洗いに行ってくるね」


二人が言い合っている隙に、そろっと病室を抜け出した。

もう耐えられなかった。

早歩きで誰もいない休憩室に行き、急いで椅子に腰を下ろす。