小さい頃、そんな話を先生から聞いた記憶がある。


前から感じていたけど深瀬くんに近づきたいと思うことは、太陽に近づくのに似てる。

近づけば近づくほど、彼を知れば知るほど、傷つくことが増えていく。心も体も痛んでいく。


わたしのしたことは間違いなのだろうか。

正しくないことは知っている。人伝いに深瀬くんの身の上話を聞くなんて、いいわけがないのは百も承知。

だけど彼の為、ただそれだけの為に、わたしは動いている。


これから先が今よりもよくなっているかもしれない可能性を信じて考えるしかない。


……でもどうしよう。わたしに何かできるかもしれないなんて大それたことを思ってしまったけれど、わたしにできることなんて何もないかもしれない。

そもそも家族の事情に介入しようとしているわたしって、とんでもなく愚かだよね。


いやだめだ。そんな風に思っちゃだめ。

もう話を聞いてしまったんだから。知ってしまったんだから。


無意識のうちについていたため息。

静かな空間の中、視界はぼやけていて、意識は脳に集中している。


──深瀬くんのお母さんは、深瀬くんに悪いことをしたと思ってるんだよね?


昨日の様子じゃ精神面は普通っぽかったし、圭悟は許してくれないとか言ってたから、自分のしたことはわかってるんだよね?

そして深瀬くんに会いたがってた。


あのお母さんからはものすごく深瀬くんへの愛情を感じた。本当に子供を心配して、思いやってるんだって伝わった。

精神を病んで深瀬くんにひどいことを言ってしまったかもしれないけど、深瀬くんを自分の子供だと心から思っているんじゃないのかな?

だからこそひどく後悔してるんじゃないのかな。