「付き合ったり結婚してケンカになったら、男は女を殴るでしょ?」

「…それ、本気で言ってんのか?」

「え?うん。全く怖くないと言えば嘘になるけど、慣れてるから平気だよ」


わたし、変なこと言ってんのかな。

深瀬くんの反応がすこぶる悪い。

まるでわたしが間違っていることを言っているみたいな気分になる。


「ダーリン?」

「──」


わたしが顔をのぞき込むと、深瀬くんは振りかざしていた手をぱっと下ろした。


「どうしたの?」

「…なんで脅しが効かねえんだよ」

「え?なに?」


そんな小さく呟かれても聞き取れませんよ。


「俺は女相手に本気で手は出さねぇ。お前みたくうぜぇ奴は別だけど、殴ったりなんかするか」

「じゃ、今のはなんだったの?」

「お前があまりにもうぜぇから…。お前、マジでなんなわけ?」

「だから深瀬くんが好きなの!そばにいたいの!どうしてわかってくれないの?!恋する乙女心を!」